「エリス、やはり俺が恐いか? 俺に触れられるのは、嫌か?」


 そう尋ねるアレクシスの切実な表情を、もっとずっと自分に向けていてほしいと、自分は確かに願っていて――。

 エリスは自覚せざるを得なかった。

 この気持ちは単なる『情』ではなく、『恋』なのだと。
 自分もアレクシスのことが、少なからず好きなのだと。

「恐く、ないです……。嫌でも……ありませんわ、殿下」
「――!」

 そうでなければ、アレクシスの指先が傷痕に触れる度、どうしようもなく体が熱くなったことに説明がつかない。
 触れられた部分が火傷のように火照って感じたのは、単なる緊張ではなかったのだ。

(ああ、そうだったのね。……わたし)

 今だって、心臓の音が全身に響いている。
 この人の気持ちに答えたい。これからも一緒にいたい、と。

 自分とアレクシス、それぞれの熱量が同じかはわからないけれど。
 そんなことは、いくら言葉を交わしたところで一生わかるはずもないけれど――それでも。

「わたくし……正直、まだよくわからないのです。殿下を愛しているかどうか……。でも……」

 エリスはアレクシスを見つめ、今の精いっぱいの気持ちを告白する。

「わたくしは、殿下とこれからも一緒にいたいと思っております。殿下と、本当の夫婦になれたらと……そう願う気持ちは、同じです」
「……エリス。――では……」
「はい。ふつつかなわたくしではございますが、どうかこの先も、殿下のお側に置いていただきたく、お願い申し上げます」

 そう言って微笑むと、アレクシスは感極まったのか、カッと両目を見開き、次の瞬間――。

「ああ、勿論だ……!」

 ――と声を震わせて、エリスの身体を抱き寄せた。