…20××年冬。今から3年前。

 今日は私の16歳の誕生日。

 なのに、、なんでなの?

 どうしてお母さんは

 居なくなってしまったの?

 私、桜坂絢音。16歳の冬は

 母親が亡くなった朝を迎えることになった。

 私は誕生日前日まで休みの日だったから

 クラスメイトの友達の家に泊まってた。

 朝から帰ろうとしたら母親が亡くなったから

 今すぐに帰って来いという父からの電話があった。

 私は母親の葬式に出たものの結局父親は

 亡くなった原因を教えてくれなかった。

 それから1ヶ月後。

 私は宮原春羽という

 一個上の先輩の家に毎晩泊まりに行った。

 何故なら父親は母親が

 亡くなった一ヶ月後には

 外で女を作り娘である

 私を家に置いて出て行ったきり

 帰って来なかったからだ。

 だからかな。寂しくて春羽先輩の家に

 毎晩泊まりに行って実家を放置した。

 いわえる、家出少女?ってやつ。

 もう生きるのも嫌だと思った私は

 ある日春羽先輩に質問した。

 「…春羽先輩。私ってこの世に

 必要なのかな。」

 こういう自分だけ不幸な悲劇の

 ヒロインぶってしまうのも…

 寂しいからかもしれない。

 きっと私は必要な人だよって

 言われたいんだと思う。

 分かってる。分かってるんだよ?

 だけど、直接大事な人から聞きたいの。

 そんな私に春羽先輩は、

 「絢音さんは必要な人だよ?

 じゃなきゃ生まれてきてないよ。

 この世は必要な人間だから生まれてくるの。

 それに人として生きるって書いて

 人生なんだから。そんなに落ち込まないの!」

 …涙が溢れた。自然とスーっと。

 あぁ、腑に落ちた。

 そっか。生きてていいんだ。

 やっぱり私はこの言葉を

 大事な人に言って欲しかったんだ。


 「有難う。春羽先輩。

 私生きてていいんだね。」

 「うん、そうだよ。もっと自分に

 自信持って前向きになろう!」

 私は春羽先輩の存在と言葉に救われた。

 それからの日記には毎日の美味しいご飯の

 感想を日記に書き続けた。

 それから一年すぎた頃。

 __キキッ‼︎__ガジャン‼︎

 「お父さん…?」

 18歳の冬。交通事故で父を亡くした。

 たった一瞬の出来事で。

 そこから16歳から18歳までの2年間の

 記憶を失った。

 私が記憶を失う前に書いた最後の日記には。

 …幸せって何ですか?

 神様、どうか教えて下さい。

 その言葉のみだった。