「ワハハハ! 奥手な碧斗にこんなカワイイ彼女が出来るとはな」
大きな声で笑う彼の名前は東堂阿修羅くん。
剃り込みの入った坊主頭、身体も大きくてバスケット選手くらい身長がある。
「ち、違います……。彼女なんかじゃ」
「ち、ちが!……まだ彼女じゃねえって!」
「え?」
「あ……」
東堂くんの言葉をあわてて否定しようとしたら、碧斗くんと見事にかぶってしまった。
あれ? 今”まだ”って言ってたような……聞き間違いかな?
碧斗くんの頬がうっすらと紅くなっている。
次に、眼鏡をかけたクールな男の子が口を開く。
「碧斗、勉強するために高校に行ったんじゃないのか?」
彼の名前は西園寺京介くん。
シュッとした線の細い体にシリアスな雰囲気を纏っている。まるで生徒会長のような風貌だ。
「碧斗をよろしく頼む。こいつの一途さは俺が保証する」
「おい、なに勝手なこと言ってんだ!」
西園寺くんの言葉に、タジタジになる碧斗くん、なんかかわいい……。
次に、一番背の低い男の子がひょっこりと前に出た。私の顔を覗き込むように見上げてくる。
「あおくんがこーんなカワイイ子連れてくるなんて、ビックリだねー」
「か、かわいくないですからっ!」
私よりも顔が小さくて可愛らしい男の子に褒められて思わず否定する。
彼は北条真冬くん。クリっとした目にキュートな口元。まるで小動物のような愛らしい男の子だ。
「あおくん、ボクにも高校の女の子紹介してー」
「ばっか! 俺は相川としか喋ってねーから」
最後に、無愛想な男の子がボソッとつぶやいた。
「久しぶりの幹部会だってのに。素人に簡単につけられてんじゃねーよ」
少し口が悪い彼は印南龍二くん。獲物を狙う狩人のような目つきで周囲を見回している。
「別にいいじゃねえか、龍二! かたいこと言うなって!」
東堂くんがそう言って、バシッと印南くんの背中を叩く。
すごい音がしたけど大丈夫かな。
派手に勘違いをしてしまった私に、碧斗くんは彼らを紹介してくれた。
碧斗くん含む彼ら五人は昔からの友達で、それぞれがこの地域の少年グループのリーダー的存在らしい。
いわゆる暴走族ってやつ?
しかし、五人とも顔が整いすぎている。アイドルグループと言われても過言じゃない。
なによりくすんだ雑居ビルを背に、思い思いにたたずむ姿はとても様になっていた。
「そういうわけで、相川。こいつらとはただ話してただけだから」
「いちよー、あおくんが総長だからねー」
と北条くん。
碧斗くんが、暴走族の総長!?
「ウッソ……」
「元、な。今は引退してっから」
気だるそうに否定する碧斗くん。
「そーそー、だからがっこーでは猫かぶってるんだって。ぼくたちといる時はいつもはこんな感じだよ」
北条くんはそう言って、碧斗くんの眼鏡を取り、髪を無造作にかき乱す。そして制服のタイを少し緩めた。
あ、昨日助けてくれた時の碧斗くんだ。
てかこっちの方がかっこいいよ絶対。