「わ、わかった。ちゃんと名前で呼ぶから……あっ、蒼生くん……」

「何だ。俺の名前、ちゃんと呼べるじゃない。絃葉ちゃん、いい子だね」


顔をほころばせながら、私の頭にポンと優しく手を置く蒼生くん。


「ねえ、もう1回名前呼んでくれない?」

「もう1回? えっと、蒼生くん」

「やばい。絃葉ちゃんに呼ばれたら俺、自分の名前好きになるわ」

「そんな、大げさな……」


蒼生くんって呼んでいる女の子は、いっぱいいるのに。


まるで天使のような、極上の笑みを浮かべる蒼生くん。


今回もまた、彼にうまく丸め込まれた感じだけど……。


私が京極くんのことを蒼生くんと呼んだだけで子どもみたいに喜んでくれる彼のことを、愛おしいと思ってしまった。