「うん。絃葉ちゃん、萩原くんのことは『圭人』って呼んでるでしょ?」
それはそうだけど。圭人は、生まれたときから一緒にいた幼なじみだからで……。
「俺は、前からずっと『絃葉ちゃん』って呼んでるのに。俺のことは、いつまでたっても苗字で呼んでるから。ちょっと距離を感じるっていうか」
京極くんが、少し切なげに笑う。
「もし絃葉ちゃんが、俺のことを本当に友達だって思ってくれているのなら……蒼生って呼んで欲しい」
京極くんのことは、友達って思っているし。そういうことなら……。
「うん、わかった。京極く……」
すると、私の唇にスッと京極くんの人差し指が当てられた。
「分かったって、言ってくれたところなのに。そんなんじゃダメじゃない、絃葉ちゃん」
「う……」
「これからは、俺のこと蒼生って呼んでくれないとキスするよ?」
へ!? キ、キス!?
「もう! 京極くんったら、またいつものように私のことをからかって。どうせ、口先だけで言ってるんでしょ……」
「ううん、口先だけじゃないよ」
彼の整った顔が、私へグッと近づき……。
京極くんは私の額に、ちゅっとキスを落とした。