数日後の朝。この日もいつものように、京極くんが車で我が家まで迎えに来てくれた。


「おはようございます、宮崎さん」

「おはようございます、深澤さん。今日もどうぞよろしくお願いします」


京極くんの執事の深澤さんと挨拶を交わすと、私は慣れた足取りで車の後部座席へと乗り込む。


「おはよう、京極くん」

「おはよう、絃葉ちゃん」


京極くんの隣に腰掛けてすぐ、こちらへと伸びてきた指に髪を優しくすかれた。


「京極くん?」

「絃葉ちゃん、寝癖ついてたよ」

「えっ、やだ。恥ずかしい……」


私の頬が、一瞬で熱くなる。


「前髪が跳ねてる絃葉ちゃんも、新鮮で可愛かったけど」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」


耳元に吹きかけられた息がくすぐったくて、ぴくりと肩が揺れる。


「絃葉ちゃんの寝癖なら、いくらでも直してあげるよ」


京極くんが耳元で喋るたびに息がかかって……って、この人絶対に楽しんでる!


だって京極くん、私を見ながら笑ってるんだもん。


「もう! 京極くんの意地悪!」

「絃葉ちゃん限定でね」


……う。京極くんにそんなことを言われたら、また胸がドキッとしちゃうよ……。