「えっと、それじゃあお言葉に甘えて。私が先に、お風呂入らせてもらうね」

「あっ。待って、絃葉ちゃん」


洗面所のドアを急いで閉めようとした私だけど、京極くんにドアをガシッとつかまれてしまった。


「な、なに?」

「ごめん。やっぱり俺、ビニールとタオルだけでも巻くよ」


お風呂のときは骨折中の腕が濡れないようにと、いつもギプスをタオルとビニールで保護しているんだけど。

それを、京極くんがしてくれるのだという。


「絃葉ちゃん、利き手じゃないとやりにくいでしょ?」

「えっと……それじゃあ、お願いします」


右腕を保護するとなると、さすがに上の服は脱がないわけにはいかず。

私は、自分でどうにかワンピースを脱いで胸から下をバスタオルで巻くと、右腕をおとなしく京極くんに差し出した。


「大丈夫。腕しか見ないから安心して」

「う、うん」


今、京極くんの視線は私の右腕にのみ向けられている。


下は、念のためにショートパンツを履いているけど、上半身は何も身につけていないから。


何かの拍子に、バスタオルが床に落ちたりしないかと余計なことを考えて、内心ハラハラしてしまう。