でも、こんなふうに距離を近づけてくるのはきっと、私の反応を面白がってやっている。


だから、負けてちゃダメだ。


「あっ、あの……時間はかかるけど、私ひとりでできるから。脱がせてもらわなくても結構です! 京極くんの気持ちだけ、有難く受け取っておきます!」

「そう?」

「はい。だから、早く服を着てくださいっ!」


私は京極くんが床に脱ぎ捨てたシャツを拾うと、慌てて彼に押しつけた。


「あーあ。せっかく、絃葉ちゃんと一緒にお風呂に入れると思ったのに。ざーんねん」


少し骨ばった長い指が、するりと私の指の間を撫でる。


う……京極くんのこの言い方。やっぱりいつものように、からかわれてただけだったんだ。


京極くんのこういう意地悪やからかいにも、いい加減に慣れないとな。


いちいち本気に取ってたら、心臓がいくつあっても足りなさそう……。