左手でスプーンを持ちながら、カレーを口に運ぶ私。


以前、京極くんに『甘えて欲しい』って言われたけど。


さっき京極くんの家でアップルパイを一切れ全部食べさせてもらった私としては、やっぱり彼に甘えてばかりなのも嫌で。


ここは自宅だし、自分でできることはしたいと言ったんだ。


「うん。このカレー、美味しいね」

「ほんと? 良かった」


京極くんの家では、基本ご飯は毎日シェフの人が作ってくれると聞いたから。

美味しいとの言葉に、ホッとする。


「絃葉ちゃん、カレーおかわりしても良い?」

「もちろん。いっぱい食べてね」


私は、お母さんが作ってくれるカレーが昔から大好きだから。

京極くんにも、気に入ってもらえたのなら嬉しいな。


* * *


夕飯の片づけのあとは、入浴。


「絃葉ちゃん、お風呂入る?」

「あ、お風呂は京極くんが先に……私、片手だけだと洗うのに時間かかっちゃうから」

「いいよ。俺はあとからで」

「でも、京極くんはお客さんだから……」


洗面所で、お互いに譲りあう私たち。


「だったらお風呂、ふたりで一緒に入る?」

「へ?!」

「一緒に入ったほうが、俺が絃葉ちゃんの髪や体も洗ってあげられるし。そのほうが、一石二鳥じゃない?」


そう言って京極くんが、自分の着ている長袖シャツのボタンを外し始める。


い、一緒に入るって……京極くん、まさか本気で言ってる!?