ていうか京極くん、まだ帰っていなかったんだ。


「そんなそんな! ただでさえ、毎日娘の学校の送り迎えやお世話をして頂いているのに。これ以上、京極さんにご迷惑をかけるわけには……」


京極くんが学校で私のお世話をしてくれていることを知っているお母さんの顔が、さらに青くなる。


「全然、迷惑なんかじゃないですよ。もちろん変なことはしませんし。絃葉ちゃんが嫌じゃなければ……ですけど。僕がしっかりと責任をもって、絃葉ちゃんを守ります」

「京極さん……」


京極くんの頼もしい言葉にお母さんは感動したのか、目をうるうるさせている。


「せっかく京極さんが、そう言って下さってるから。お言葉に甘えてお願いしようかしら。ね? 絃葉」

「う、うん」


京極くんだって、本当は休日の夜くらい家でゆっくりしたいだろうに。

彼が、良かれと思って言ってくれてるんだから。私に断る権利なんてない。


「学校で絃葉のことを、いつもお世話してくれている京極さんが家にいてくれると思うと、安心だわ。よろしくお願いしますね」

「はい。任せてください」


まさか今夜、私の家に京極くんとふたりきりだなんて。


こうして急遽、京極くんが我が家に泊まることとなった。