「さっきから私、京極くんに食べさせてもらってばかりでごめんね? 京極くんも食べて」


私は自分の前に置かれている手つかずのアップルパイがのったお皿を、京極くんの前に持っていく。


「俺はいいよ。絃葉ちゃんが美味しそうに食べているのを見ているだけで、十分幸せだから」


紅茶を上品に、ひとくち飲む京極くん。


「京極くんったら、またそんなことを……」


頬が熱くなるのを感じて、私は顔を伏せる。


「俺はいつも、本当に思ってることしか言わないよ」


長い手が伸びてきたかと思うと、京極くんの指が口元に触れた。


「絃葉ちゃん、唇の端にパイの粉がついてる」

「……っ!」


顔を覗き込まれながら、すっと長い指に口の端を拭われ、心臓が波打った。︎︎︎︎


「わぁー。お兄ちゃんと絃葉ちゃん、やっぱり仲良しだあ」


嬉しそうな陽莉ちゃんを見ていると、私は何も言えなくなる。


「いいなあ。陽莉も絃葉ちゃんと、もっと仲良くなりたい」

「それを言うなら、兄ちゃんも。今よりもっともっと、絃葉ちゃんと仲良くなりたいって思ってる」


え?!


京極くん、私ともっと仲良くなりたいって思ってくれてるの!?


そう思ってくれてるのは、嬉しいけど。


それって多分、あくまでもクラスメイトとして……ってことだよね?