京極くんに、あーんして食べさせてもらうことに、一瞬躊躇する私。


「どうしたの、絃葉ちゃん。食べないの? 学校では、いつもこうしてるじゃない」

「そうだけど……」


口元まで運ばれてさすがに食べずにはいられず、私は意を決してかぶりついた。


「んっ。このアップルパイ、すごく美味しい!」


リンゴの濃厚な甘さと、サクサクとしたタルトの食感。それに、爽やかな紅茶の味がとてもよく合う。


あまりの美味しさに、私は食べているそばから笑みがこぼれる。


晴れ渡る空の下。色とりどりのきれいな花が咲き誇る広いお庭で、ティータイムだなんて。


「はぁ〜、幸せだなあ」

「そう言ってもらえて良かった。それじゃあ、絃葉ちゃん。どんどん食べて」


自分が食べるのもそっちのけで、私にアップルパイを食べさせてくれる京極くん。


「ふふ。お兄ちゃん、絃葉ちゃんにずーっと食べさせてあげて。お兄ちゃんと絃葉ちゃんって、仲良しなんだね」


私が京極くんに食べさせてもらう様子を、じっとそばで見ていた陽莉ちゃんがぽつり。


「ああ、そうだよ。陽莉の言うとおり、兄ちゃんたちは仲良いよ」


陽莉ちゃんに、にっこり微笑む京極くん。


それを見て、ハッとする私。


「あっ、やだ。私ったら……」


陽莉ちゃんの前で、恥ずかしい……。