「絃葉ちゃん……右手、痛いよね?」
私のギプスで固定された右腕を見つめる大きな瞳には、涙が溜まっていた。
「ごめんなさい。陽莉のせいで……」
「ううん。こうなったのは、陽莉ちゃんのせいじゃないから。大丈夫だよ」
「ほんと?」
「うん。右手は動かせなくても、私すっごく元気だから!」
私は陽莉ちゃんに、左手で握りこぶしを作ってみせる。
すると、陽莉ちゃんは可愛い笑顔を見せてくれた。
「そうだ、陽莉ちゃん。ピンクのシュシュ、私の分までありがとうね。今日、つけてきたんだ」
私はくるっと後ろを振り返り、陽莉ちゃんにポニーテールとピンクのシュシュを見せる。
「わあ。絃葉ちゃん可愛い〜。シュシュつけてくれて、陽莉すっごく嬉しい!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねる陽莉ちゃん。
そんな彼女の髪にも、私と同じピンクのシュシュがつけられている。
あのとき、陽莉ちゃんが横断歩道で落とし物をせず事故に遭うこともなかったら、それが一番だったけれど。
あのときの事故がなければ、いま私がここに立っていることもなかったかもしれない。
そう考えると、これも何かの縁なのかな?