木々が優しく揺れる、穏やかな初夏のある日。
私は今、とても緊張している。その理由は、京極くんの家にやって来たから。
『来月のゴールデンウィーク、家に遊びに来ない? 招待するよ』
先日、体育の授業のときに京極くんとそんな話をしてから1週間。
まさか、本当に実現するとは思わなかった。庶民の私が、あの京極くんの家にお邪魔するだなんて!
「絃葉ちゃん、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
ガチガチになっている私を見て、京極くんが笑う。
いやいや! ここに来て、むしろ緊張しないほうがおかしいよ。
京極くんの家は、お手伝いさんが沢山いて。
イギリス風の洋館のような見た目に、広いお庭には噴水やプールもあって、桁外れの豪邸なのだから。
ていうか、今更だけど……私の格好、変じゃないかな?
今日は黒地に白のドット柄のワンピースを着て、お母さんに手伝ってもらって髪の毛は巻いてポニーテールに。
もちろんこの間京極くんからもらった、陽莉ちゃんとお揃いのピンクのシュシュをつけてきた。
「さあ、どうぞ」
「お邪魔します」
京極くんのあとに続いて玄関を入ると、小さな女の子が駆けてきた。