「お、思い出してません! ていうか京極くん、髪の毛とか結べるの?」


ムッとして、つい可愛くないことを言ってしまった。


「大丈夫だよ。たまに、妹がやってって言うから。陽莉の髪も結んであげてるんだ。だから、貸して?」

「それじゃあ……お願いします」


今度は素直に京極くんにヘアゴムを渡すと、彼の手が私の髪にそっと触れる。


「じっとしててね」


すうっと、長い指が私の髪を梳いていく。


「絃葉ちゃんの髪、サラサラだね」

「そうかな?」


京極くんに触れられると、ドキドキする。


「普通に、ひとつに結んだら良い? 編み込みとかもできるけど」

「えっ。京極くん、編み込みもできるの!? すごいね」

「そんな、大したものはできないけど。それじゃあとりあえず、今日は普通で良いかな。編み込みは、また今度ね」


“また今度”ってことは……京極くん、いつかまた私の髪の毛を結んでくれるつもりでいるんだ。