頭上からいきなり声がして、顔を上げると。


「きょ、京極くん!?」


なんと、さっきまでグラウンドでサッカーをしていたはずの京極くんがそばに立っていた。


「絃葉ちゃん、驚きすぎ」

「ご、ごめん……」

「ねえ。その髪、俺がやってあげるから。ヘアゴム貸して?」


私は、京極くんへと伸ばしかけた左手を引っ込める。


「いいよ。何でもかんでもやってもらってばかりじゃ、悪いから」


さっきの、彼のサッカーでの活躍ぶりを見ていたら。

みんなから一目置かれている京極くんに、こんなことまでやってもらうなんて……と、急に申し訳ない気持ちになってしまった。


「いいよ。俺は、絃葉ちゃんのお世話係なんだから。そんな遠慮なんかしないで。俺のこと、もっと頼って? 俺は、絃葉ちゃんに甘えて欲しい」


京極くん……。


「甘えても、いいの?」

「もちろん。さっきも言ったでしょ? 俺がそばでお世話したいって思うのは、絃葉ちゃんだけだって」

「……っ」


さっきの、体育の授業前の廊下でのことを思い出した私は頬が熱くなる。


「あれ。絃葉ちゃん、もしかして何か思い出したの?」


ニヤリとした京極くんの長い指が、私のブラウスにかかる。