* * *
次に目を開けると、真っ白な天井が視界に入ってきた。そして、ツンと薬品の匂いが鼻を掠める。
あれ、ここは……?
「……痛っ!」
右手を動かそうとすると、今までに感じたことのないような強い痛みが走った。
「ああっ。ダメよ、絃葉。右手を動かしちゃ……!」
ベッドのそばには、心配そうな顔をしたお母さんが立っていた。
「あれ。お母さん、私……?」
「あなた、学校帰りに事故に遭って。そのまま、病院に運ばれたのよ」
そうだ。私、車に轢かれそうになっていた女の子を助けて……。
「ねえ、あの女の子は!? 大丈夫なの!?」
「ええ。絃葉のおかげで、無傷だったそうよ。さっきあなたが寝ている間に、親御さんと一緒に謝罪に来られて……」
ベッドのそばの小さなテーブルには、リンゴやメロンといった果物が入ったカゴが置かれている。
「そっかあ。あの子が無事で良かった……」
「ほんと、絃葉ったら無茶しちゃって。人助けは良いことだけど、お母さんどれだけ心配したと思ってるの!? もし、最悪の事態になっていたら……!」
「ご、ごめんなさい……」
お母さんにキツく言われた私は、しゅんと肩を落とす。
「だけど、あなたが無事で本当に良かったわ」
お母さんが、私を優しく抱きしめてくる。
すごく、心配をかけさせてしまったんだな。ごめんね、お母さん……。