体育の授業中。


右腕を骨折している私は、制服のまま木陰に座って授業を見学している。


今日の体育はグラウンドで、男女ともにサッカー。


外はポカポカと暖かい陽気に包まれていて、暑いくらいだ。


「いいかー! 男子は先にゲーム、女子はパスの練習だ」


準備運動のあと、赤いジャージ姿の体育の先生に指示されたクラスメイトたちがそれぞれ駆けていく。


「あーあ。宮崎さん、こんな暑いなかサッカーしなくて良いとか羨ましい」

「ほんと〜。骨折のおかげで、毎日蒼生くんにお世話されて。体育も休めて……いいよねぇ」


体育倉庫にサッカーボールを取りに行く際に、私の前を通りかかった女の子たちの心ない言葉が胸に刺さる。


私だって今、好きで体育を見学しているわけじゃない。


骨折した腕はギプスで固定してなきゃいけないし、骨がくっつくまではむやみに動かせない。

学校での板書や、ご飯。お風呂に、服を着替えるときだって、片手だけだと今までの何倍も時間がかかる。


利き手が自由に動かせないことは、思ったよりも苦労が多くて大変なのに……。


私は、唇をきつく噛み締める。