「俺がこんなふうに意地悪したいって思うのも。そばで、お世話してあげたいって思うのも……絃葉ちゃんだけだから」


え!?


「それだけは、ちゃんと頭に入れておいてね?」


耳元に囁くようにして言うと、パチンと片目を閉じる京極くん。


「それじゃあ、またあとで!」


そして京極くんは、早足で教室へと戻っていく。


はぁ……まさか、学園の王子様である京極くんに、あんな一面があったなんて。


朝から沢山ドキドキさせられて、心臓に悪いよ……。


京極くんは基本優しくて、私のことをよく気遣ってくれるけど。

たまに、今みたいに意地悪なことを言ってくるときもあるから……よく分からない人だ。


京極くんにからかわれたり、意地悪されるのは嫌だけど。


──『俺が意地悪したいって思うのも。そばでお世話したいって思うのも……絃葉ちゃんだけだから』


あんなことを言われたら……京極くんのこと、嫌いになんてなれないよ。