「ちょっと、京極くん!?」


京極くんは私と繋いだ手を離すことなく、ひたすら廊下を突き進む。


京極くんと繋がれている手が、熱い。


そのまま私たちは歩き続け、中庭へとやって来た。

私は、京極くんと並んでベンチに座る。


「……ごめんね、絃葉ちゃん」

「え?」

「ここまで、強引に連れてきちゃって」


私は、首を横に振る。


「あと、さっきのことも。俺が絃葉ちゃんといるせいで、女子にあんなこと言われちゃったんだよね?」


京極くんが、肩を落とす。


「もしかして、これまでもさっきみたいに女子から何か言われたりした?」


京極くんに尋ねられ、私は素直に頷く。


「正直に言うと、最近京極くんが私とばかり一緒にいるから……多分、女の子たちは面白くないんだと思う」

「そっか。やっぱり俺のせいか……ごめん」


京極くんの声のトーンが下がる。


「いや、でも、それは京極くんのせいじゃないよ。京極くんは、私のためを思ってお世話してくれてるんだし……京極くんは、何も悪くないから」

「ありがとう。やっぱり絃葉ちゃんは、優しいね」


京極くんが、小さく笑う。


「俺なんか、たまたま財閥の家に生まれたってだけで。別にそこまで大したこともないのに、なぜかみんな寄ってたかって……俺は、自分の好きな子にだけモテたら、それで良いのに」