京極くんが私に差し出してきたのは、さっきの日本史のノート。

京極くん、私が板書できていないことに気づいてくれてたんだ。


「あっ、ありがとう……!」

「大丈夫? 左手、疲れてない? 次の授業、良かったら俺が絃葉ちゃんの分もノートとろうか?」


京極くんって、本当に優しいなぁ。


ここ数日は、昼食のときはいつも京極くんにご飯を食べさせてもらって。

他にも移動教室で教科書を持ってもらったり、今日からは学校の送り迎えまでしてもらうことになったから。


これ以上、甘えてばかりもいられないよ。


「ありがとう。気持ちは嬉しいけど、できることはなるべく自分でしたいから。でも、このノートだけ借りてても良い?」

「もちろんだよ」


「返すのは、いつでも良いから」と付け加えると、京極くんは自分の席へと戻っていった。


さっそくノートを書き写そうと、私は京極くんのノートを開く。