「もう。京極くんの意地悪!」

「ごめん、ごめん。可愛い絃葉ちゃんのこと、ちょっとからかってみたくなっちゃって」

「え!?」


可愛いって、そんなことをさらっと……。


「からかったお詫びに、これは俺が持つよ」


京極くんは私の教科書やペンケースを小脇に抱えると、廊下を歩きだす。


「優しいわね〜、京極くん」

「う、うん」


横から和花ちゃんに、左腕を軽く小突かれる。


京極くんはさっき、お詫びって言っていたけど。
もしかして、最初からそのつもりで……?


私は、少し先を歩く京極くんの背中を見つめる。


「絃葉、何やってるの? 行くよ」

「あっ、うん!」


和花ちゃんに呼ばれ、私は慌てて駆け出した。