昼休みのあとの5限目は、音楽の授業。


私が、京極くんと和花ちゃんと3人で音楽室へと向かって廊下を歩いていると。


「きゃ!」


前から走ってきた男の子が、私の左肩にぶつかってきた。


──ガシャン!


その弾みで、私は持っていた教科書やペンケースを廊下に落としてしまう。


「もう! 廊下は走るなって、先生にいつも言われてるでしょう!?」


私とぶつかった男の子に、和花ちゃんが注意をしてくれる。

だけど、男の子はこちらを一度も振り返ることなく、そのまま走って行ってしまった。


「もーっ! 何よ、あの子!」


怒っている和花ちゃんを横目に、私が落としたペンケースや教科書に手を伸ばすと。


「絃葉ちゃん、大丈夫!?」


私よりも先に、京極くんが拾ってくれた。


「あ、ありがとう」

「もし、絃葉ちゃんが骨折してる右のほうに当たっていたら、大変なことになっていたかもしれない。ほんと、廊下は走るなっての」


京極くんは、走っていく男の子の背中を軽く睨む。