「そ、そりゃあもちろん……お、お箸のほうで!」
「そっか。お箸がいいのなら、最初からちゃんと食べてくれたらいいのに。絃葉ちゃん、素直じゃないなあ」
少し意地悪く微笑むと、京極くんはお箸に挟んだ玉子焼きを再び私の口へと運んでくる。
あーんと彼に言われて、私は玉子焼きをパクリ。
「絃葉ちゃん、美味しい?」
「はい……」
なんだか京極くんに、上手く誘導された気もするけれど。
そもそも彼は、私のためにこんな面倒なこともやってくれてるんだから。感謝しないと。
「ありがとう、京極くん」
「ううん。どういたしまして」
「……いいなあ、絃葉。京極くんに食べさせてもらって」
私がしばらく京極くんに食べさせてもらっていると、向かいに座る和花ちゃんが羨ましそうな目で見てくる。
「ねえ、京極くん。あたしにも食べさせてー?」
「ごめんね? 俺は、絃葉ちゃん専属のお世話係だから」
京極くんの言葉に、胸がドキッと跳ねる。
「ですよねぇ。ああ、絃葉が羨ましい〜」
そう言いながら、サンドウィッチを頬張る和花ちゃん。
「絃葉ちゃん、次はウインナー食べる?」
「は、はい」
それから私は、京極くんの手からおかずを食べさせてもらうたびに、胸がドキドキしてしまった。