「どうしたの、絃葉ちゃん。食べないの?」
「えっと、京極くん……申し訳ないけど私、お箸で食べさせてもらうのはちょっと……」
「え? お箸だと気が進まない? それじゃあ、口移しがいいってこと?」
へ!? く、口移しって! 京極くんったら、どうしてそうなるの!?
「わ、私、そんなこと言ってな……」
「絃葉ちゃんって、意外と大胆なんだね?」
口の端を、くいっと上げる京極くん。
「絃葉ちゃんがどうしても口移しが良いって言うのなら、俺はやるけど?」
京極くんの指先が、私の顎を掬いとる。
や、やるって。いくら何でも冗談だよね?
いや、京極くんなら本当にやりかねないかも。
「ねえ。口移しと、俺が絃葉ちゃんにお箸で食べさせるの……どっちが良い?」
京極くんの整った顔が私に近づき、心臓が跳ね上がる。
まさかの選択肢がその二択しかないなんて! 京極くんってば、意地悪だ……!
「さあ、絃葉ちゃん。どっちにする?」