あ、あれ? お箸はあるけど、フォークがどこにも見当たらない。お母さん、入れるの忘れちゃったんだ!


仕方ない。左手でお箸を持つのは、まだ慣れていないけど……頑張ろう。


私は慣れない左手でお箸を持ち、玉子焼きを箸に挟もうとするも、すぐに落としてしまう。


「絃葉ちゃん。俺にそのお箸貸して? 俺が食べさせてあげるよ」

「ええ!?」

「はい、絃葉ちゃん。あーん」


私が返事するよりも先に、隣に座る京極くんが私のお箸で玉子焼きを挟み、私の口元へと持ってくる。


その途端、和花ちゃんだけでなく教室の他のみんなの視線が集まるのが分かった。


うう。和花ちゃんだけならまだしも、クラスのみんなに見られながら食べるだなんて。


そんなの、無理だよ……!