「……っん」


最初は触れ合うだけだったキスが、次第に吐息さえも飲み込むような深いものになっていく。


「あっ、蒼生くん。こんなところ、もしご家族の誰かに見られたら……っ」

「心配ないよ。両親も陽莉もみんな出かけたから。しばらくここには、誰も来ないよ」


美しい薔薇の花が咲き誇るなかで、私は蒼生くんと繰り返しキスをする。


庶民の私にはずっと手の届かない人だった蒼生くんが、ひょんなことから私のお世話係になって。


だけどそれは、私の右腕の骨折が治るまでの、期間限定の関係なのだとばかり思っていたから。


まさか、蒼生くんが私の恋人になる日が来るだなんて……全く想像すらしていなかった。


蒼生くんは、右腕を骨折してるせいでままならないことも多かった私を、たくさん助けてくれたから。


これからは私も、蒼生くんの手となり足となって、お互いに助け合いながら一緒に過ごしていけたら良いなって思う。


「絃葉ちゃん、これ……」


蒼生くんがお庭の赤い薔薇を3本摘んで、私に渡してくれる。


「これは?」

「俺が絃葉ちゃんのことを、“愛してる”って意味だよ」