「ああ、それなら大丈夫だよ」


蒼生くんが、ニコッと微笑んでくれる。


「許嫁っていっても、あれは祖父たちが勝手に決めたことだったし。それに……実は姫華にも、好きな人がいるみたいで」

「えっ、そうなの!?」


パーティーのとき、姫華さんは蒼生くんのことを抱きしめていたから。

彼女も蒼生くんのことが好きなのだろうと思っていた私は、目を見開く。


「絃葉ちゃんを招待したあのパーティーから少しして、姫華のほうから俺に謝ってきたんだよね。“あおくんの他に好きな人がいるから。申し訳ないけど婚約を破棄してもらえない?”って」


婚約破棄。姫華さんがそんなことを……。


「今まで姫華なりに、俺のことを好きになろうと努力してくれていたみたいだけど、無理だったって。やっぱり自分には、想い人の彼しかダメだと思ったみたい」


そうだったんだ。姫華さんにも、そこまで好きだと思える人がいたんだね。


「それから姫華と二人で、婚約破棄させて欲しいと祖父たちに頼みに行ってね。最初は大反対されたけど、俺の両親は絃葉ちゃんのことを気に入っていたから。祖父に色々と口添えしてくれたみたいでね。それで渋々だけど、どうにか祖父にも分かってもらえたよ」


良かった。おじい様にも許してもらえたんだ。


「だから俺は今、問題なく絃葉ちゃんと付き合える」


蒼生くんの言葉に、私はホッと胸を撫で下ろす。