「お疲れ、絃葉ちゃん」
「お、お疲れ様。急にごめんね? 一緒に走ってもらっちゃって」
「そんなの全然いいよ。それより、お題は何だったの?」
……う。そうだよね。やっぱり聞かれるよね。
「良かったら、教えてくれない?」
「ええっと、それは……」
少し落ち着いたはずの胸の鼓動が、再び加速する。
ドキドキし過ぎて、心臓が口から飛び出しちゃいそう。
だけど、ちゃんと言わなくちゃ。
蒼生くんに伝えるって、決めたんだから。
「あのね……」
私は勇気を振り絞り、蒼生くんの耳にそっと唇を近づける。
「……好きな人」
「え?」
「あの紙には【好きな人】って書いてあったの」
「好きな人って、絃葉ちゃんは萩原のことが好きなんじゃ……?」
「ううん、圭人じゃない。私が好きなのは……蒼生くんだよ」