「……いいよ」


頭上から、声がした。


私が顔を上げると、目の前には蒼生くんが立っている。


蒼生くん、応援席から出てきてくれたの?


「行こう、絃葉ちゃん」


そして、蒼生くんが私の右手を取ると。


「絃葉ちゃん、走るよ!」

「はいっ!」


手を繋いで、一緒に走る私たち。


「キャーーッ!!」


どの応援席の前を通っても、聞こえてくる女子の悲鳴。


「絃葉ちゃん、あと少しだから頑張ろう」


私のスピードに合わせて走ってくれる蒼生くん。


「うん!」


やがて、目の前にゴールテープが見えてくる。


私は蒼生くんと手を繋いだまま、ふたりで一緒にゴールテープを切った。


「1位、赤組ー!!」


アナウンスの声に、ワアッと歓声が起こる。


うそ……私たち、1位でゴールできたの?


動き出すのが遅かったから、てっきりビリになるのかとばかり思っていたから。


まさか、1位になれるなんて。


しかも、蒼生くんと一緒に……って!


そうだ。いま私、全校生徒の前で蒼生くんと手を繋いで走っていたんだ。


そのことに今頃気づいた私は、顔がぶわっと熱くなる。