少し前の私ならあの子たちみたいに、蒼生くんに『おめでとう』って言えていただろうけど……今はもう言えない。
あれ以来、蒼生くんとは言葉も交わさないし、教室で目が合うことすらなくて。
私が右腕を骨折する前の関係に、戻ってしまった。
私と蒼生くんを繋いでいたのは、私の右腕の骨折や、彼がお世話をしてくれていたことだけだったのだと改めて痛感させられる。
蒼生くんが私に話しかけてこないのもあるけど、私も蒼生くんのことを避けてしまっているから。
蒼生くんを見ると、どうしても姫華さんの顔が頭を過ぎってしまうんだよね。
前に私が蒼生くんに『右腕の骨折が治って、お世話をしてもらう必要がなくなっても、一緒にいても良いの?』って聞いたとき。
『俺と絃葉ちゃんは、友達なんだから。お世話係とか関係なく、友達としてこれからもそばにいて』って、蒼生くんは言ってくれたけれど。
やっぱり私たちは、友達にはなれなかったね。
そもそも、庶民の私と御曹司の蒼生くんは住む世界が違うから。
蒼生くんが私のお世話係でなくなってしまったら、こうなることなんて最初から分かっていたはずなのに……。
いざ本当にそのときが来たら、予想以上に辛くて苦しい。
今自分がこんなに苦しいのは、私がまだ蒼生くんへの気持ちに吹っ切れていないからだ。