本当は右腕の怪我が完治するまで、このまま蒼生くんに、お世話係を続けて欲しいけど……そんなの絶対にダメだ。


「今は、圭人もいてくれてるから大丈夫。それに、和花ちゃんも……っ」


自分で言いながら、じわじわと涙が溢れてくる。


「……そっか、そうだよね。ついいつものように、絃葉ちゃんのことを迎えに来てしまったけど。君には、萩原がいるもんね」


どこかが痛むような顔で私を見つめる蒼生くんに、胸が締めつけられる。


ねえ。どうして蒼生くんまで、そんな辛そうな顔をしているの?

蒼生くんにそんな顔をさせてしまっているのは……もしかして、私のせい?


「絃葉ちゃんのほうから、こうしてちゃんと言ってもらえて良かったよ。それじゃあ……これで本当に、絃葉ちゃんのお世話係も終了だね」

「……っ、うん。今までありがとう、蒼生くん」


私がお礼を言うと窓ガラスが閉まり、蒼生くんを乗せた車はゆっくりと動きだす。


これで本当に、蒼生くんとの関係も終わり。


そう思うと同時に、ぼたぼたっと大粒の涙がこぼれる。


「……っう」


これから学校だから。急いで駅に行かなきゃならないのに。


なぜか私の足は、その場に根付いたように動かなくて。


しばらく私は涙しながら、走っていくリムジンを見つめていた。