京極家のパーティーの翌朝。


この日も変わらず、蒼生くんと執事の深澤さんが私のことを車で迎えに来てくれた。


「おはよう、絃葉ちゃん」


車の窓ガラスが下がり、中から蒼生くんが微笑んでくれる。


「おはよう、蒼生くん。あの、せっかく迎えに来てもらって悪いんだけど……」

「ん? どうしたの?」


口ごもる私に、蒼生くんが首を傾ける。


こんなこと言い難いけど。蒼生くんに、ちゃんと言わなくちゃ。


「こっ、これからはもう……車での送迎は、してもらわなくて結構です」

「え!?」


先にスマホのメッセージで蒼生くんに言っておけば良かったものの、パーティーでのショックをまだ引きずっている私に、そんな余裕はなかった。


「えっと。蒼生くんには、姫華さんという許嫁がいるから。こうして車に乗せてもらったり、蒼生くんに私のお世話をしてもらうのは……やっぱり良くないと思って」


蒼生くんの顔が見れなくて、私は俯いてしまう。


「それにね、骨折から1ヶ月が経って右腕も随分と良くなってきてるの。この前の受診でも先生から、あと少しでギプスも取れるだろうって言われたんだ。だから、お世話も送迎ももう必要ない……です」