「あの二人、お似合いだったな」


先ほどの光景を思い出すだけで、鼻の奥がツンと痛む。


萩原と一緒にいるときの絃葉ちゃんは、気楽な感じで楽しそうだったし。


萩原が転校してきたときも、絃葉ちゃんはとても嬉しそうで。

幼なじみの二人の間には、特別な絆があるように見えた。


俺がどれだけ頑張っても、小さな頃から一緒にいた萩原にはやっぱり敵わないよなあ。


「……好きだったよ、絃葉ちゃん」


失恋しても、俺が君を好きな気持ちは変わらない。


簡単に諦められないし、この想いはすぐに消えそうにないけど……。


俺も、本当に絃葉ちゃんのことが好きなら……いつまでも落ち込んでいないで、彼女の幸せを一番に考えないといけないな。


できることなら絃葉ちゃんの骨折した右腕が完治するまでは、君のお世話をしていたかったけど……。


絃葉ちゃんのそばには、萩原がいるから。


俺はたぶん、もう必要ない。


だったら……絃葉ちゃんのお世話係も、今日でおしまいだ。


まだ痛む胸を手のひらでぐっと押さえると、俺は真っ直ぐ前を見据え、パーティー会場へと向かって歩き出した。