俺は踵を返すと、早足で歩きだす。
さっきからずっと、心がザワザワして落ち着かない。
「あっ。あおくん! こっちで一緒にデザート食べない?」
「悪いけど、今は食欲がないんだ」
姫華の誘いを断り、俺はフラフラとひとりパーティー会場を出ていく。
「抱き合ってたってことは、やっぱりそういうことだよなあ……」
こんなことは考えたくないけど、絃葉ちゃんと萩原が両想い……。
俺は、失恋したってことか……。
あてもなく歩き続けた俺は、ホテルの廊下の一番奥まで来てしまった。
──ダンッ!
俺は、壁に勢いよく両手をつく。
俺が絃葉ちゃんを好きなように、絃葉ちゃんにも好きな人くらいいる。
俺がいくら絃葉ちゃんのお世話をしようと、彼女の気持ちまで手に入るわけじゃない。
そんなの、自分が一番分かっていたはずなのに──!