──ペコッ。


その子が俺に軽く会釈してくれたけれど、俺は視線をそらしてしまった。


やばい。俺がそっちを見てたこと、バレたかな? バレたよな……。


俺がもう一度そちらに目をやると、女の子はもうこっちを見てはいなかった。


どちらも何も話したりすることなく、そのまましばらくまた電車に揺られる。


夕焼けに染まる街並みを窓越しに眺めていると、電車は俺の降りる駅に到着した。


俺が、黙って電車を降りると……。


「あっ、あの!」


……え?


俺の後ろには、さっきの女の子が立っていた。