「けっ、圭人……!」


振り返ると、そこにはグレーのスーツを着た幼なじみの圭人が立っていた。


「えっ。どうして圭人がここに!?」

「親の会社が京極財閥と取引先で、父さんと一緒に俺も招待されてたんだよ」

「そう、なんだ……」


圭人のお父さんは、日本とアメリカで会社を経営しているから。


「……で? なんでお前は、ここでひとり泣いてんだよ?」

「そっ、それは……」


まさか、蒼生くんに許嫁がいることを知って、失恋したショックで泣いてたなんて……いくら何でも圭人に言えない。


「絃葉、さっきまで京極と二人でパーティーを楽しんでたんじゃなかったのかよ?」

「圭人……み、見てたの!?」

「たまたま目に入ったんだよ。ったく、絃葉があいつと楽しそうにしてるから。邪魔しないでやったのに……まさか泣いてるなんて」


小さくため息をついた圭人の手が私の腰にまわされ、私は圭人に突然抱き寄せられる。