まさか、蒼生くんに将来の結婚を約束した人がいたなんて。


今までそんな話、蒼生くんから一度も聞いたことがなかったから。


今の話は私には衝撃すぎて、言葉が出てこない。


許嫁がいるのなら、蒼生くんも言ってくれたら良かったのに……。


初めて知る事実に、胸を深くえぐられたような痛みを感じる。


「……っ」


視界は徐々にぼやけ、あまりの胸の痛さに息も上手くできなくなる。


ていうか私、蒼生くんに許嫁がいるって知って、どうしてこんなにもショックなんだろう……ああ、そうか。


私は今、自分の気持ちにはっきりと気づいた。


私……いつの間にか蒼生くんのことを、憧れではなく、ひとりの男の子として好きになっていたんだ。


今までずっと、テレビ画面越しに観るアイドルや俳優のような存在に思っていた彼のことを、いつしか本気で好きになってしまっていたんだ。