「いいね、この指輪。羨まし」

「返して下さい……っ!」

「嫌」

聞き入れて貰えない。

それどころか私に見える位置で。まるで身動きの取れない私に見せびらかすようにくるみさんはそれを自身の指に通した。

私のなのに……っ、結くんがくれたやつなのに…。

悔しくなって下唇を噛んだ。

「ねぇ、1個言っていい?」

「うっ……」

髪の毛をグイッ、と掴まれて無理矢理顔を上げさせられた。嫌悪に満ちた視線と絡み合ったかと思えばくるみさんは満足気に口を開いた。



「​​あんたさ────…、心臓病なんでしょ?」



「……っ」

ドクン!と大きく心臓が跳ねた。

「余命宣告? っていうの? されてんでしょー?」

「なんで……それ…」

「あははは! あの時はそこまでは分かんなかったけどもう調べはついてんの。もちろん結には話してるのよね!?」

「…っ、」

何も言えなかった。視線を逸らせば弱みにつけ込まれるかのようにまた高飛車な笑い声が響く。

「え、なになに!? 話してないのぉー? やっばー!」

「……指輪、返して下さい」

「嫌」

ペチン!と頬を叩かれて頭が地面に落ちる。

痛……っ

グラグラと目眩がする中、更に畳み掛けられた。

「どうして結に言ってないのー?」

「……」

「ねぇ!」

「……」

「おい!!!」