「ほら。確か肉じゃがって奥さんに作って欲しい料理ナンバーワンでしたよね? 若、案外ベタなお方っすから」

確かに…、いつもデートに連れて行ってくれる所も、結構ベタ中のベタ。

それに最初の頃。

ーー知らねぇのか? 妻がいると世界が輝いて見えるんだ

私が、どうしてそんなに若くして結婚したいのか、って聞いたらそんな返事が返ってきたことを思い出す。

確かに肉じゃがは今まで結くんに作った事ないし、いい案かもしれない。

頭の中に必要な食材を思い浮かべる。

えー、と、まずじゃがいもとお肉…

スポンジと飾り付けに使うフルーツも忘れないようにしなきゃ。

***

車に揺られる事10分。

到着したのは近くのショッピングモール。

いつも真柴さんが私のお洋服を買ってきてくれる所みたい。

「じゃあまた後で! 終わったらここ集合っす!」

「はい」

真柴さんと別れて。私は1階にある食品売り場へ。カゴを手に取り、順調に今日必要な食材を入れていく。

よし。このくらいでいいかな…っ

お会計を済ませ、真柴さんと待ち合わせした場所に向かう。

辺りを見ると真柴さんはまだ来てないみたいで、トイレに寄ることにした。

「ふぅ…っ、」

お会計を済ませた辺りから少し息苦しい。

鏡に映った自分の顔は唇の色も紫味を帯びているし、何だか血色が悪い。

一応薬…っ

今日は体調を崩す訳にはいかない。前みたいに気付いたら朝だった、なんてそんなの嫌。

ごく、と薬を飲み込む。

よし。これで大丈​───────…

ーーバチバチバチ!!

直後のこと。首筋に電流が走って、何が起こったのか考える間もなく私は意識を失った。