「いえ、食欲なくて…」

ご飯すらまともに作れないくらい私の身体は弱って来ているのだろうか。そう思ったら悔しさでいっぱいになった。

布団の端をギュッ、と掴んでなんとかそれを表に出すまい、とする事で精一杯。

​────結くんと出会う前は定期的に昔から通っている病院に通院して検査をしていた。でも病院にはしばらく行っていないし、正直今現在の病状は自分でも分からない。

病院に行かないのは、もう、行きたくないから。病院から逃げて。この心臓病から逃げて。少しでも普通の女の子として生きていたいから。

きっと行ったところで命のタイムリミットをより鮮明に告げられるだけ。

だったら少しでも結くんとの時間を大切にしたい。

……そう思うようになっていた。


結局その日は結くんが帰ってきた事にも気づかず、そのままベッドで眠ってしまった。目が覚めたら朝日が昇っていて、隣にはいつも通り結くんが眠っていて。

そういえば昨日は夜ご飯どうしたんだろう、とか。お出迎えもせずに申し訳なかったな、とか。色々考えていた時に、結くんがパチ、と目を覚ました。

「あ、こもも……、起きたのか」

「結くん…っ、あの、昨日はご飯も出せずに、先に寝てしまってごめんなさい…」