この心臓でもう18年近く生きているのに。

やっぱり心のどこかではまだ割り切れていないみたいだ。

‪”‬私はこうだ‪”‬って…。

私はみんなとは違って走れる時に走れない人間なんだ、って。

割り切ってるつもりだったけど、時折ひょこっと顔を出す嫉妬心がそれを否定する。

せっかくお母さんが……、命懸けで産んでくれた命なのに。

どうしてこんなにも嫌な感情にばかり呑まれていくんだろう。

***

「茅島さん」

「はい」

園を出ようとした所で、泉さんに声を掛けられた。泉さんの手には厚みのある茶封筒が握られている。

「これ」

「え…っ?」

その茶封筒を私の前に差し出した泉さん。

なんだろう、と思いつつも恐る恐る受け取って中を見る。

「こんなの頂けません……っ」

中に入っていたのは1万円札が何枚か。

私は泉さんに封筒をグイッ、と押し付けるように手を伸ばす。

「いいのよ。ほら。茅島さんアルバイトとかしてないって言ってたでしょう? ひとり暮らしならいろいろお金掛かるだろうし、ここのボランティアやってるだけじゃ​────」

「ボランティア、といってもここではいつもお金以上のものをもらっています。楽しいですし、みんな可愛いですし…。ですからお気持ちだけ…。ありがとうございます」