物心着いた頃には、もう孤児院にいた。

「さと、おや…?」

15になったある日のこと。

あたしに里親申請が来たみたいで、里親候補の人と会う事になった。サングラスを掛けた怖そうなおじさん。組長、と呼ばれていた。

あたしのどこを気に入ったのか知らないけれど、手続きは着々と進み、すぐにそのおじさんに引き取られる事になった。

​────あとから知る事だけれど、そのおじさんは霧矢組の組長・霧矢宗次郎(きりや そうじろう)だった。

はじめて人を拷問して殺している所を見た時は驚きのあまり、言葉を失った。

今あたしは極道の世界にいるんだ、と強く思った瞬間だった。

逆らえばどうなるか分からない。ヤクザとかよく分からないけれど、幼ながらに何となくでも強くそう思ったのをよく覚ている。

孤児院にいた時も肩身は随分狭かったけど引き取られてからの方がずっと狭い気がしていた。

どうしてあたしを引き取ったのだろう。

日々そう考えていたけれど、そんな疑問はすぐに解決した。


引き取られて1ヶ月程経ったある日の事。

「今日からこいつの身の回りの世話をしてもらう」

そう紹介されたのは当時16歳の霧矢結だった。

いずれ霧矢宗次郎の跡を継ぐお方だと説明された。あまり笑わない、何を考えているのか分からない。そんな人。