ーーあんたまさか雷狂組の女か? 若の命狙おうとしてんじゃねぇだろな

ヤクザは危険と隣り合わせ。

それはそっちの世界のことを何も知らない私でも知ってること。でもやっぱり不安で、いても立ってもいられなくて。聞いてしまった。

「結くんは…、命を狙われているんですか」

「……」

すぐには答えてもらえなかった。でも少しの沈黙が流れたあと。静かに教えてくれた。

「…組を引っ張る人間を殺そうと目論む人間がいるのはこの世界じゃ当然のことだ」

「……ですよね」

「どうした?」

本当に言いたいことは喉の奥につっかえたまま。このまま飲み込もうとも思ったけれど、でも言いたくて。ゆっくりと引き結んだ唇を解き、口を開いた。

「結くんが死んじゃったら悲しいな、って…考えてました……」

「なんだ、そんなことか」

「そんなことじゃないです…っ」

いなくなったら……、悲しい人。

今の私にとって、結くんはそういう存在なのだから。いや……ううん。それ以上。

「そんなふうに思ってくれてありがとう」

「いえ……っ」

「命は常に狙われているが、俺は死なない」

「…? どうしてそう言い切れるんですか」

「旦那は妻を悲しませることはしないから」

なんの迷いもなくそんなことを言ってしまう結くんはすごくかっこいい。

……私も、それが言えたらどんなにいいか。