どうしても堪えられなかった。

慌てて手の甲で涙を拭う。


ーー心臓病? 子供に遺伝したら大変だわ

ーー‪”‬あれ‪”‬じゃまともな跡取りなんて産めないだろう


いつか、破談になった縁談で言われた言葉がトゲトゲしく脳裏をよぎっては今も当時と変わらない強さで心を蝕んでいく。

「ちょっと…、お手洗いに寄ってもいいですか」

「ん」

楽しそうに遊ぶ子供達のそばを横切りながら公園のトイレに駆け込む。

個室に入ってすぐにしゃがみこんだ。

「はぁ……っ、はぁっ…」

薬……、飲もう…

ポシェットから薬を取り出して飲み込む。

「はぁっ、…ふー……、ふー…」

季節の変わり目だから仕方ないことなのかもしれない、ってあまり気にしてなかったけど最近また、突然息苦しくなることがある。家でも度々あるけれど、その度にトイレやシャワールームに駆け込んで、なんとかやり過ごしている。

「……」

やり過ごす、って……、なんだろ。

ペタン、とドアにもたれ掛かる。

自分が嫌になった。

いつだってこの隠し事には後ろめたい気持ちが付きまとう。

服が破れちゃいそうなくらい胸元をギュッ、と掴んだ。


結くん…、ごめんなさい。

私、この事だけは……






絶対に言いたくないです……っ