「せっ、世界…っ、それは嘘です…!」

「いや、俺の妻の料理は世界1だし」

また、もくもくと食べてくれる結くん。

今度は私が、小さく微笑んでしまった。

「ふふっ…」

……気が早いです。

しあわせ、って気持ちが込み上げてきて胸がいっぱいになった。

***

初めの頃はシャワーの際髪の毛1本も残さないように、と気を張っていたけれど、今ではだいぶ肩の力を抜いて過ごせるようになった。

​────結婚とは、籍を入れること。

少し前、結くんはそんなことを言っていたけれど、籍など入れなくても今の私たちの生活はまるで結婚しているかのようだった。

時々しあわせ園のことが頭に浮かんで、みんなどうしてるかな、なんて思うことはあるけれど…

朝、結くんを玄関で見送って。
夕方、帰宅する結くんを出迎える。

日に日に、そんな生活に慣れつつあった。

外には一切出ない。
必要なものは真柴さんに言えば1時間もしないうちに買ってきてくれるし、何不自由ない生活だった。

‪”‬籠の中の鳥‪”‬

かつての自分はそう思ったけど今はそこまで悲観的に自分の置かれた環境を見ていない。

むしろ世の中の専業主婦はこんな感じなんだな、と思っては、エプロン姿の自分をニヤニヤしながら眺めたりした。