私がそう言っている間にも結くんはご飯をスプーンですくって、パクリ。

私が不安になるくらい警戒心の欠片もないみたい。それはそれで嬉しいけれど心配が勝る。

「すげぇおいしい」

「ありがとう、ございます…っ」

下を向いた自分の顔がポッ、と赤くなっていくのを感じた。

それからももくもくと食べてくれる結くん。対面に座っている私も食べながらそんな結くんをチラチラと盗み見ていた。

さっき口ではすげぇおいしい、って言ってくれたけど正直あまりおいしい、って感じの顔ではなかった。

感情がそう大して顔に出ることがない、と言われればそれまでだけど、もしかして本当はお口に合ってなくてお世辞でおいしい、って言ってくれた、なんてことはないだろうか。そんな可能性が静かによぎったその時。

「ふっ…」

それまで表情に変化もなく食べていた結くんが小さく微笑んだ。

「え、どうしたんですか…っ」

口に入っているものを飲み込んで、質問する。すると「いや…」と口を開いた結くん。照れたようにそっぽを向きながら続けた。

「これから毎日小桃の手料理が食べられるんだな、って思ったらなんかすげぇ嬉しくなった」

「…っ」

私が不安に思っていた時に、結くんはそんなことを考えてくれていたんだ。

「そんな…大したものじゃありません……」

「いや、世界で1番おいしい」