「なんだそれ」

そんな声に我に返り、振り返るといつの間にか背後に結くんが。着替えが済んだのかスーツ姿でネクタイをいじりながら私の手元をのぞきこんでいる。

咄嗟に薬が入っているポーチはトートバッグの奥に隠してしまった。

「あっ、結くん…っ」

「だいすき?」

「3歳の子が私にくれたものなんです」

「へぇ。いいな、そういうの」

子猫に見せるような落ち着いた笑顔を見せてくれた結くん。その横顔に釘付けになる。

意外だった。そんな顔もするんだ…

「なんだ」

「いえ……っ」

慌てて視線を逸らすけど後から真柴さんに言われてしまった。

「若、カッコイイっよねぇ。時々あぁいう顔するんすよ」

「いえっ、私はそういうんじゃ……」

「え? そうなんすか? てっきり未来の旦那に見惚れているのかと」

「見惚れ…」

はたから見たらそういう眼差しに見えていたんだ…。なんだか恥ずかしい…

結局朝食は真柴さんが近くの喫茶店のモーニングをテイクアウトしてきてくれて、それを食べた。モーニングをテイクアウトなんてお客さん滅多にいないだろうからきっとお店の方がわざわざ対応してくれたんだと思う。

「じゃあ行ってくる」

「はい。あっ、あの…っ」