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玄関がガチャ、と開く音で目が覚めると、時刻は夕方17時過ぎ。

最後に会った時の姿と何も変わらない姿の結くんが部屋に入ってきて、慌てて身だしなみを整える。

「あっ…、おかえりなさい……」

「そんなとこで寝てたのか」

「ごめん、なさい…」

「別に怒っていない」

この人を前にするとどうしても萎縮してしまう。肩を竦め小さくなると結くんがそっと私のことを抱き寄せた。

「ただいま」

ドクンドクン。

耳元で聞こえる結くんの心臓の音。

ドクンドクン。

そしていつもより大きく聞こえる私の心臓の音。

誰かがそばにいることが。

家の中がひとりぼっちじゃなくなったことが。

孤独な心をフワッ、と軽くしてくれる。

「うぅ…っ、ゆい、くん…」

外国の方がよくやる軽いハグだと思ったら、私の背中に回す結くんの手にはどんどん力が込められていくばかり。

背骨が折れちゃうよ……っ。

男の人にこんなにも力いっぱい抱きしめられたのは生まれて初めてでどんな反応をしていいのか分からない。

「…いい匂い」

「へっ……?」

私の匂い……嗅いでるのかな…?

そんないいものじゃないと思うけど……

あ。シャワー浴びたからかな?