様子を見に行けば女はだいぶ弱っているようだった。馬乗りになり見下ろせば半開きの目が俺を見据えた。

女に手荒な真似は出来ない。

これは組の方針。

たとえ口を割らせる為の手段だとしても、だ。

「吐かねぇなら今すぐこの腹かっさばいて、臓器全部売り飛ばす。麻酔なんかしねぇからな、激痛で叫び散らかしても知らねぇぞ」

……これくらいの脅しが限界。

頼むから早く口を割ってくれ。その方が身の為だ。

別に殺しやしない。情報だけ吐いたらすぐ解放してやる。お前は女だからな。

しかしよほど組織への忠誠心が高いのか、そこまで脅しても女は最後まで口を割らなかった。

それどころか、ただの脅し文句で使っただけの臓器をあげる、とまで言い出した。

薄暗い地下室でひたすら受け続ける尋問に耐え、食べ物だってまともに食べていないそんな極限状態の中、こんなセリフが口から出た、なんて信じられなかった。

他人の喜びなんか考えたもんじゃないだろ…

場違いなまでの自己犠牲。

呆れて何も言えなくなった俺はふと女の目に涙が溜まっていることに気が付いた。

1回の瞬きでそれは溢れて流れていく。

咄嗟に女に手を伸ばしていた。

こんなにも胸が締め付けられたのは、


生まれて初めてだった​───────。